沿線計画シミュレーター / 沿線カルテ編

測れる事実だけで、沿線の未来を見る。

乗車人員を予測するのはやめた(できないと較正編で確かめた)。代わりに、 確かに測れるものだけを重ねる——各駅の駅勢圏人口が2050年に向けてどう動くか(公式の500mメッシュ将来推計)と、 いま実際に何人乗っているか。予測ではなく、意思決定のための"沿線の体力測定"。

この編の約束。

ここに出るのは全部 測れる事実 だけ。駅勢圏人口の 2020→2050(国土数値情報の将来推計メッシュ)、 令和4の実績乗車人員、そして地価公示2025の地価・用途地域・容積率。これらを掛け算して「将来の乗車人員」を作ることは、しない—— 人口は乗車をほとんど説明しない、と較正編で自分たちで証明したから。 並べて見せる。判断するのは人間。それが誠実な沿線カルテの流儀。

図1 / 路線別の人口体力(駅勢圏合算, 2020→2050)

路線ごとに、未来の重さが違う

各線の全駅の駅勢圏人口を合算(近接駅で重複あり=概況指標)。福岡県全体は 2020→2050 で −13% 沈むなか、都心を貫く路線は踏みとどまり、住宅地の末端は細る。

参考:福岡県 総人口 513万(2020)→448万(2050)。都心アクセスの厚い路線は人口減の大勢に逆らって微増。

図2 / 駅別 駅勢圏人口の増減(2020→2050)

沈む西部、伸びる海側と跡地

駅ごとの徒歩800m圏人口の 2050 増減率。赤=減る緑=増える。 七隈線の西部(早良・城南の住宅地)が軒並み1割前後の減少。逆に姪浜・室見(西部海側)と 箱崎(九大跡地の再開発)が伸びる。

空港線 箱崎線 七隈線
出典:国土数値情報『500mメッシュ別将来推計人口(R6)』PTN_2020/PTN_2050。徒歩800m圏をメッシュから合算。

図3 / 地価と用途地域(沿線の"開発の器")

都心は商業地・高容積、西部は住居専用・低容積

地価公示2025の駅勢圏(半径1km)から、各駅の地価中央値・用途地域・容積率を測る。横軸は地価(対数)。 緑=商業地域橙=住居系灰=工業系。 都心の商業地(容積500〜800%)と郊外の住居専用(容積80〜110%)で、地価は中央値で約19倍 (地点では天神1,210万 vs 七隈13.8万=約88倍)、開発の器は桁で違う。

商業地域 住居系(低専/中専/住居) 工業系
点=地価中央値、右の注記=用途地域と容積率(指定)。出典:国土数値情報『地価公示 L01-2025』福岡県。 地価公示は評価地点のサンプルで全面被覆ではない(駅勢圏1km内の点数 n を踏まえて読む)。左の小丸は路線色。

図4 / いまの乗車 × 未来の人口

この2つは、別々に測る

横軸=駅勢圏人口の 2050 増減、縦軸=いまの乗車人員(対数)。 2つとも実測値。掛け算しない、線も引かない——ただ並べる。すると、両者が まったく無関係に散らばるのが見える(桜坂は人口最大級&増加なのに乗車最小、博多・天神は人口横ばいでも乗車最大)。

だから沿線カルテは、この2軸を「計画の材料」として別々に置く。 たとえば いま良く乗られていて人口が細る駅(右下寄りの左側)は"守り"の対象、 人口が伸びるのに乗られていない駅(右下)は用途・まちづくりの伸びしろ、という読み方をする。乗車の予測ではない。

図5 / 立ち位置

測る・監査する。予測はしない。

この製品が名乗ること/名乗らないこと

やる(測る・監査)
・沿線の人口体力(現在〜2050)を公式データで測る
・用途地域・地価・実績乗車を重ねる
・他者の需要予測を実績で答え合わせする
やらない(予測)
・新線の乗車人員を当てる(=プロの領域・OD調査が要る)
・人口×係数で将来乗車を作る(人口は乗車を説明しない)
・位置情報の自前収集(代表性・プライバシーで筋が悪い)

需要予測はプロ(四段階推定法+大都市交通センサスのOD)の仕事。我々の役どころは、 公開データだけで沿線を"測り"、その予測を"監査する"こと。砂上の楼閣を建てない、という選択。